• TOP
  • 特集
  • 開発未経験の大学生にヒットアプリを連発させる 「Touch the Numbers」のテクノード鎌田氏が語る 「カジュアルゲーム収益化プログラム」

従業員それぞれが自分の作りたいアプリを作り、その完成までの技術を社長が教えてくれる。そんな少々変わった体制でアプリを開発しているのが、「Touch the Numbers(タッチザナンバーズ)」等のカジュアルゲームで知られる株式会社テクノードだ。

アプリの開発には多方面の技術が必要となる。企画から始まり、プログラミング、デザイン、音楽…ものによってはシナリオ作成の技術も求められる。大手開発会社ならばそれぞれの専門スタッフが分業で一つのアプリを創り上げるが、個人~数人の小規模開発ではそうはいかない。

例えば個人開発のアプリディベロッパーの場合、1つは自分の不得手な分野があって開発に行き詰まったり、「このクオリティさえ上がればもっといいアプリになるのに」と悔しい思いをしたことがあるのではないだろうか。

テクノードの社長である鎌田氏は、自社スタッフがこうした状況に陥った時に手を差し伸べる役割を担っている。多くのアプリディベロッパーを育成してきた鎌田氏に、個人開発または、今後アプリ開発に参入しようという中小企業がどのようなジャンル・収益モデルを目指すべきか、アプリ事業における要点を語って頂いた。

スマホアプリ事業での大きな第一歩

テクノードの沿革は、親会社である寺島情報企画の新規事業部時代に遡る。当時、寺島情報企画はフィーチャーフォンに関わる事業を柱としていた。端末がスマートフォンに切り替わってゆく時代の流れを見越してスマホアプリを開発する事業部を設立することになり、そこが独立する形で本格的にスマホアプリ事業へと参入して行ったという。

「狭まっていくだけの市場にしがみ付いているだけでは、この先の事業展開が厳しくなることは分かっていました。先行者のメリットを狙う意味でも、早い段階で新たな市場に手を広げる必要があったんです」

アプリでの収益化はさほど考えられていなかったにもかかわらず、楽器アプリを中心に300万ダウンロードを達成。テクノードは当時既に、スマホアプリ市場で大きな一歩を踏み出していた。

独立してすぐに制作された代表作「Touch the Numbers」もヒット。一時的に下請けの受託開発をしていたこともあるが、現在は新規の受託開発は停止して自社企画アプリに専念しているという。

「収益安定化の為には受託開発も一つの手ではあります。しかし安定したリソースと開発力が求められるし、ノウハウも蓄積できないといったデメリットがあります」

自社企画のアプリ開発に絞り、受託ならではのストレスがなく開発に専念できる環境を作ることで、最終的にはレバレッジも効くし、成功に繋がるだろうと判断したのだという。

「本当はプログラマーにだけはなりたくなかった」鎌田氏の経歴

鎌田氏がプログラミングを始めたのは小学校3年生くらいの頃。父親が買ってきたPCで最初にMSX-BASICを覚えたとのことで、その経歴は長い。
しかし学生時代にプログラマーの大変さを散々聞かされた為、一番遠い仕事を選ぼうと出版社に編集者として入社。入社時はプログラミングができることも隠していたという。

折しも着信メロディが流行りはじめた頃。コンピュータ・ミュージックの雑誌を作っていたことが縁で、J-PHONEの公式サイト「メロナビ」を通して着信メロディの品質向上を図る企画に携わることになり、そこから携帯電話業界に足を踏み入れて行く。

この過程の中で鎌田氏は、アプリ制作のベースとなる様々知識や技術、ツールの使い方等を身につけた。公式サイトの制作でサーバ関連の技術を身につけ、雑誌編集の経験でフォトショップやイラストレーターなど一通りのデザインツールに慣れ、元々強かった音楽方面の知識を磨き、紙面づくりから UXを学んだのだ。アプリを作り始めて本格的にUIやUXを意識し始めたときに、それらの経験や断片的な知識が繋がって実を結ぶこととなる。

「雑誌やサイト作りは結果論ではありますが、UIの勉強になりました。色遣いや配置で読者の視線がどう動くとか、どこに注目するとか。アプリのUIを決める上での判断基準になったんです」

こうした鎌田氏の様々なビジネス経験がアプリ開発に生かされているのは間違いないが、一体どうやって経験もノウハウもない学生たちにアプリ開発を実現させているのだろうか。

「カジュアルゲーム」にこだわる

テクノードに勤務しているのは正社員1名、派遣社員事務1名、派遣デザイン1名、派遣プログラマー2名、後は学生アルバイトが10名前後在籍している。

正社員の仕事はアプリ開発全般から従業員の管理、教育までを担う「何でも屋」で、アルバイトの仕事は「自分のアプリを完成させること」だという。その為に正社員や鎌田氏は、惜しみなく知識を分け与える。

「アプリを完成させる為のノウハウを教えて困ることはないです。業界の移り変わりが激しいので知識を出し惜しみしても意味はありませんし」

まず最初に各自が「こんなアプリを作りたい」という企画を口頭で持ち込み、早ければその場でGOサインを出す。開発途中で何かに躓いた時は鎌田氏や正社員が手助けするものの、基本的には本人の自主性に任せるといった姿勢を貫いている。

その為に企画からコーディング、デザイン、サウンドも1人で作ることができるよう、一通りの環境は揃っているという。
開発するアプリの内容や開発者の出社スケジュールにもよるが、だいたい2週間くらいでそれなりに動くようになり、2~3か月で形になる。

首位を獲得したり何百万もダウンロードされているヒットアプリも、ほとんどは完成まで半年とかかっていないのだという。

例えばAppStore無料総合ランキング最高3位、累計65万ダウンロード以上を記録している人気アプリ「うろおぼ絵17」の場合。開発した学生アルバイトからこのゲームの企画が出たのは2010年10月半ば頃で、4ヶ月後の翌年2月15日にリリースされている。

開発者は1人で、だいたい週2~3回、1日3~8時間の出社スケジュールということなので、かなりのハイペースだ。こうして短期間で開発できるのは多くの実績から得たノウハウが有ることはもちろん、「カジュアル」にこだわっていることが理由の一つに挙げられると鎌田氏は説明する。

「一回のプレイ時間を短く。あとは本格的なシリアスゲームを作らないことがポイントです」

一人で開発することを考えると、カジュアルでなければならない。カジュアルゲームを作る以上、スキマ時間に短時間でプレイできなければならない。
また、簡単に起動できて暇つぶしに最適なゲームを目指すことは、後に述べる収益モデルとしての成功の為にも意味があるという。

「暇な時間」にこそ広告露出のチャンスがある

一般的にアプリ開発で収益をあげようとする場合、以下のパターンが考えられる。

1. 受託開発
2. 無料アプリのアプリ内広告
3. 有料アプリ
4. フリーミアム(アプリ内課金)

まず1.の受託の場合、自社企画アプリに比べて納期や仕様変更への対応などリソース負荷が高い。
3.の有料アプリはユーザーに求められるハードルが高くなり、メンテナンスコストは増すが、買い切りの為継続的な収益を見込む事が難しい。
4.のフリーミアムでよくあるソーシャル・カードゲームで成功するには開発、運営とも大きなリソースが求められる。1本に5千万円かけて、3本や4本のうち1本当たれば回収できるというようなビジネスモデルは小規模なところでは厳しい。

「プレイし終わったときにユーザーの意識が一旦ゲームから離れ、広告を見てもらえるチャンスが来るんです」と鎌田氏。
上記の理由から、テクノードは2番目に挙げた無料アプリ(アプリ内広告)をメイン開発に選んでいるという。

テクノードが得意とするカジュアルゲームは、「暇つぶしに最適」という点でもこのアプリ内広告という収益モデルにマッチしている。
暇があるということは一旦ゲームが終わったときに、広告を見てくれる余裕があるということだ。配置場所やタイミングを工夫することで、広告配信は広告主にとってもユーザーにとっても有益なものにできるのだと鎌田氏は語った。

「プレイし終わったときにユーザーの意識が一旦ゲームから離れ、広告を見てもらえるチャンスが来るんです」と鎌田氏。

広告の表示回数を増やすためにも、ゲームの最小単位を突き詰める

テクノードのアプリ開発は前述のように、まず最初に「こんなアプリを作りたい」という構想から始まる。通常ならばそのまま企画を進めて開発するところだが、同社の場合は最初の構想と同時に「アプリ内広告のカジュアルゲーム」という枠組みに則って企画が作られる。

例えば広告モデルとして最初に開発された「Touch the Numbers」の場合を例に挙げてみよう。
当時鎌田氏は脳トレやプチプチ潰しのような流行を取り入れたゲームを作りたいと考えていた。
その構想と広告モデルに必要な要素を練り込み、効果的なUIを突き詰めて、最終的に「Touch the Numbers」に辿り着いたのだという。

「Touch the Numbers」はランダムに出現する1~25までの数字を順番に押して、スピードを競うカジュアルゲーム。1回のプレイ時間は長くても20秒程度だ。

広告モデルで必要な要素というのは当然、広告収益を上げるということである。
広告収益を上げるためには広告の表示回数を増やす必要があり、表示回数を増やすにはプレイ時間を短くしなければならない。またゲームに集中しているときに広告があっても効果が薄い。認識機会を増やす為にはゲームから開放される機会を増やすことが重要だったのだ。

「ディレクターもデザイナーも豊富な大手アプリ開発会社とは真っ向勝負できません。ですから中小アプリ開発会社ならではの手法で勝負し、着実にダウンロードし続けてもらうほうが長い目で見てメリットが大きいと思います」

小規模開発で手堅い収益を考え、長期の安定を得る為の合理的な開発手法。
それは決して派手なものではないかもしれないが、柔軟かつスピーディな開発が可能な中小企業にはメリットが大きい。

今後テクノードは更なる活躍の場を広げ、カジュアルゲームだけでなくツール系やエンターテイメント系にも手を伸ばす予定なのだという。カジュアルゲームで蓄積したノウハウがどのように生かされ、またどのような新しい手法が生まれるのか。

アプリ事業の収益化に成功した一つの良例として、テクノードの今後の動向にもぜひ注目したい。

取材・構成 / 高階良輔  文 / 長丸裕

  • iOS
  • Android

無料

Touch the Numbers

tekunodo.

3.25
アプリストアを見る

無料

Touch the Numbers for Android

tekunodo.

-
アプリストアを見る

この記事を書いたライター